始まりはブログから
2003年ごろ、食品関係の仕事をする傍らで、僕はふと写真趣味について思うところを書き記したくなりました。
特に志もなくふらりと始まった、写真やカメラやレンズについての放談ブログ「私が間違っておりました」は、今で言うところのレビューサイトにあたります。
撮ることが好きで、それ以上に、メカニカルなカメラという道具に魅力を感じていた僕は、好きなところも嫌いなところも、思うままブログに書き記していきます。
そのコンテンツは、気がつくとそこそこのボリュームになっていました。
そうするうちに、いつの頃からか、カメラという趣味の世界が、普通のアパレルとは違った、離れ小島のような感性で成り立っていると感じるようになりました。
実用には足るけれど愛着とは無縁のストラップ。100m先からでも用途が分かる、運搬と機材の保護に特化した箱のようなカメラバッグ。
路上でのスナップが好きな僕は、できるだけ気配を消したいと常々思っていたのですが、それが叶わないことに不満を持ち始めます。
その思いを事あるごとにブログで吐露したところ、思わぬ反応がありました。少なくない賛同を得たのです。
カメラをただの「道具」から、愛着を持って接する「相棒」へと昇格させることができるグッズを商品化したら、喜ぶ人がいるかも知れない。
そんな思いを胸に、Photo Life Laboratory ULYSSESは、2009年、1本のレザーストラップからスタートしました。
ロゴマークがカエルのわけ
さて、商品の開発に着手してほどなく、僕はとんでもないことに気づきます。
「自分は今、メーカーになろうとしている」
今までは、名もなきユーザーとして、個人のブログという安全な井戸の底で、好きなことを言いたい放題言っていれば楽しく過ごせる身分でした。
ところが、メーカーとなったらそうは行きません。
たとえ小さかろうが、カメラユーザーの大切な道具を確実にサポートする覚悟と責任が要求されます。
つまり、自分自身が辛口なレビューに晒される立場になったわけです。
いうなれば、ユリシーズは、うっかり井戸の底から出てきて、大海の広さに驚いたカエルのようなものでした。
だったら、自分が小さなカエルであることを隠さずに、自分たちのアイデンティティにしてしまえ。
そんな理由で、今日に至るまで、ユリシーズのロゴにはカエルが鎮座しているのでした。
日本人以外には分かりにくいお話ですね(笑)。
ユリシーズという名前の意味
写真は、人生の一瞬一瞬である「今」を切り取っていくもの。その積み重ねは俯瞰して見ると、ひとりの長い旅路と言えます。
1枚でも多くの写真を、スマートフォンではなくカメラという道具で、少し大切にシャッターを切って、多くの人に残して欲しい。
そのためには、撮りたいと思ったその時に、カメラを持っていることが重要になります。
だったら、用がなくてもカメラを持ち歩きたくなるような、カメラへの愛着が増すグッズを作って貢献できるのではないか?
そこで、「壮大で長い旅」を意味する言葉「Odyssey(オデッセイ)」の語源となった叙事詩「オデュッセイア」から、その主人公オデュッセウスのラテン語名「Ulyssses」を借り受け、「長い旅をする人」という解釈を持たせて、ブランド名とすることにしました。
目指すものづくり
ユリシーズは次の4つを念頭に置いてものづくりをしています。
よく考える
使い手のことを深く考え、さらに使い手の想像を半歩超えるものを目指しています。
シンプルにする
不便の一歩手前まで要素を減らし、残ったものには、自然と「用の美」が備わっていると考えています。
気分が少し上がる
日々、それを使うたび、目にするたびに「これを選んでよかった」と思えるものを目指しています。
長く使える
ずっと付き合っていきたいと思えるものに価値を感じています。